愛の嘆美
2007年 06月 21日
高村光太郎の智恵子に対する想い、熱烈な欲情をそのままに熱く詩う、
「愛の嘆美」です。
高村光太郎
底の知れない肉体の欲は
あげ潮どきのおそろしいちからー
なおも燃え立つ汗ばんだ火に
火龍はてんてと躍る
ふりしきる雪は深夜に婚姻飛楊
寂寞とした空中の歓喜をさけぶ
われらは世にも美しい力にくだかれ
このとき深蜜のながれに身をひたして
いきり立つ薔薇いろの蕾みに息ずき
因ダ羅網の珠玉に照りかえして
われらのいのちを無尽に鋳る
冬に潜む揺監の魔力と
冬にめぐむ下萠の成熟とー
すべての内に燃えるものは<時>の脈拍とともに脈うち
われらの全身に恍惚の電流をひびかす
われらの皮膚はすさまじくめざめ
われらの内臓は生存の喜びにのたうち
毛髪は蛍光を発し
指は独自の生命を得て五体に葡ひまつはり
道を蔵した揮沌のまことの世界は
たちまちわれらの上にその姿をあらはす
智恵子が亡くなった後も、光太郎は智恵子の裸体のブロンズを
見ると、自身の中の男が目覚めるのを抑えられなかったと、
語っていたそうです。
by tabotaboy
| 2007-06-21 21:51