裸形
2007年 06月 24日
光太郎の智恵子を恋し愛する思いの深さ、その気持ちが良く伝わってくる詩を
もう一篇紹介します。
「裸形」
智恵子の裸形をわたくしは恋う
つつましく満ちてきて
星宿のように森厳で
山脈のように波うって
いつでもうすいミストがかかり、
その造形の瑪瑙質に
奥の知れないつやがあった
智恵子の裸形の背中の小さな黒子まで
わたくしは意味ふかくおぼえていて、
今も記憶の歳月にみがかれた
その全存在が明滅する。
わたくしの手でもう一度、
あの造形を生むことは
自然の定めた約束であり、
そのためにわたくしは畑の野菜が与えられ、
米と小麦と牛酪とがゆるされる。
智恵子の裸形をこの世にのこして
わたくしはやがて天然の素中に帰ろう。
愛され、思われて、何時までも余韻を残す智恵子、その余韻にひたる光太郎・・・・相思相愛の二人・・・・読む者にも切ない余韻を残します。
by tabotaboy
| 2007-06-24 14:21